レッスンは期間を設け、あらかじめ決められたプログラムに沿って、集中して学んでいただくようお願いしております。これは前に申し上げたように、目標の自動達成システムを働かす上で非常に重要な要素になるからです。また、週に一回以上コンスタントに通われる方は理解も深く、自己流の解釈で練習をすることが少ない為、好不調が少なく、数か月で大方の形が出来上がるのに対し、月に1~2回の方ではほとんどの時間を自己流の解釈による練習に充ててしまう為、筋肉に変な癖が付いてしまい、前回のレッスンのレベルに戻すのにレッスン時間のほとんどを費やしてしまい、結局、長い年数をかけても中途半端な理解で終わってしまい、お互い、不満足な結果で終わってしまう傾向があります。特に学生の方は学校で教わっている先生のレッスンと二足のわらじになってしまい、このことが一つのメソードを、体に染み込ませる大きな支障になってしまいます。このような場合、可能であれば、学校のレッスンが無い休暇などを利用し、短期間に集中的に通って頂くことを強くお勧めします。この期間は自分で練習したりせず、マンツーマンで1日につき1つの部位に集中して、レッスンすることにより、発声器官の動き方を生徒と教師で共有して理解することが出来、短期間で大きな成果が得られるからです。個人レッスンでは基本的に12回のプログラムされたレッスンを12週間以内に消化して頂き、メソードの基礎をご理解頂きます。その後は必要な時に予約を取って頂くか、コースを継続するかの選択をして頂き、各自の希望する曲に取り組むというスタンスをとっています。
レッスンの前に確認しておきたいこと
当教室で最も重要視しているのが発声における外と内の感覚です。『いかにして自分の内側に意識を向けず、外の感覚だけで歌うか?』この感覚を習得して頂くと、その後に続くレッスンの流れがスムーズに進み、早い段階での上達につながります。これまでレッスンを行っていて『先生と同じテクニックを使えば、すぐに同じ声が出せる』と思っている人が思いの外、多い事に驚かされるのですが、正しい声を出すのに必要な筋肉や器官が自分の意志と同じ働きをしてくれるまでには時間がかかります。人によってはすぐに機能する場合もありますが、数年を要す場合もあります。この差は必要な筋肉や器官の修復に個人差があるというより、 ”対象とする部位に正確な影響を与えるイメージがどのように描かれるべきか確定するまでには時間がかかる。”ことで生まれてきます。 レッスンの中で指摘したことが直ぐに反映されるようになるのは、以下のような過程を経て初めて可能だという事を理解してください。
レッスンを効率的に進める為の重要な心構え
1.異論が無い限り、教師の指摘はそのまま全て受け入れて下さい。疑問や納得できない点があれば歌う前に必ず質問し、納得してから声を出すよう、心掛けて下さい。イメージが筋肉や器官に与えるパターンを教師と同一にすることによって、レッスンでの指摘は時間と共に的確に反応するようになっていきます。決してやってはいけない事は疑問や迷いを持ちながら歌う事です。
2.レッスンで指摘された注意点は意識しなくても、無意識に出来るよう、一日につき、一つの部位だけに集中して練習し、その働きを体に染み込ませて下さい。歌唱中は何一つテクニックに関することは考えないという前提があって、初めて声楽家としての表現が可能になります。
3.歌詞をつけて歌う場合、必ず暗譜をしてからレッスンに臨んで下さい。譜面を見ながら歌った場合、声は喉周りから離れにくくなってしまい、身体の外での響きを理解することが出来なくなります。また、中途半端に歌詞を覚えてきた場合も同様で、忘れた歌詞を思い出そうという内向きの意識が外の響きをつかむことを妨げ、レッスンを無駄に終わらせる結果になってしまいます。私のレッスンでは初期の段階では母音のみで歌って頂き、歌詞で歌う段階になっても、最初の内は単語の発音や意味などの理解より ”何らかの感情” を持って歌う事を重視します。レッスンの段階を踏むに従い、歌詞の持つ音声的役割や、意味の理解を進めてください。
4.家に帰っても決して自己流の出し方で声を出さないこと。違った出し方をした分だけ、正しい発声に必要な筋肉はその疲労回復に時間を要し、習得が遅れてしまいます。復習として、レッスンの通りに歌い、後で録音したものを確認する方法なら良いのですが、歌いながらその出来を確認する行為は決して行ってはいけません。
5.最終的には外の感覚だけで、喉には全く力が入らない状態で歌えるようになりますが、正しい頭部共鳴をつかむ途中の過程においては、新しい部位の使い方や、力の抜き方を確認してしまう為、かえって内向きな歌い方になり、喉に力が入ってしまうこともしばしばあります。ただ、この段階を抜きにして、最初から喉周りの力の抜けた状態をつかもうとすると、ほとんどの場合、響きを正しいポジションに導くことがかえって難しくなり、遠回りになってしまうので注意が必要です。
レッスンの具体的な流れは次のようになります
声を出す仕組みについての理解
当教室では声が出る仕組みについての説明は初回に重点的に行います。その後、レッスンでの説明は最小限に留めて、発声の機能的な働きを意識せず、外の感覚で歌うように導いていきます。必要以上に体の内部に意識が向くと発声はかえって難しくなり、習得はかえって遠回りになるからです。実際、声楽家の中にも○○筋の何々が△△に当たって共鳴が~と科学者顔負けの知識を持っている方もいらっしゃいます。しかし、言葉を覚える前の乳児が見本を見せなくても腹式呼吸や長時間鳴き続ける術を本能的に身に付けているのと同様、自然な発声とは、言葉を話し始めるにつれて自然に身についてしまった身体の様々な癖を除外し、失っていった本能的な感覚に近づける作業の先に存在するものだということを理解して下さい。
今までの間違いを理解する
一度身についてしまった悪癖を矯正するにはそれを身に着けた期間の何倍もの期間が必要だと言われています。これは負担をかけた筋肉を元の状態に戻す期間というよりも ”負担をかけた筋肉に働きかける正しいイメージを描けるようになるまでの期間” といった方が正しいかもしれません。ある程度声楽を学んだ方に共通する考えとして存在するのが、新しい声楽教師に学んでも、今までの方法で問題ないと思われる要素についてはそのまま今までのメソードに従い、新しい先生には欠点を補ってもらおうという考え方です。一見、効率的で自然な考えのように思われるかもしれません。しかし、2人以上の教師に同時に師事した場合、初めこそ大きな上達が見られますが、いずれ伸び悩むようになります。
何故なら、ある一つの問題点を解決するために重要となる部位を正しい動きへ導くためには、ほとんどの場合、その部位以外からの影響を考慮することが重要で、それらの相関関係を教師の見解と同一にする事によって、時間と共にレッスンでの指摘が教師の意図したように働いてくるからです。生徒が「結果的に前の先生が言っていたことと同じことだから」と勝手に解釈し、以前の方法である問題が克服されたとしても、(今の)教師は生徒が「自分と同じイメージで歌っている」という前提で次のアドヴァイスに進むので、この時点で考え方の基盤がずれてしまい、教師の指摘は生徒の発声器官に正しくイメージを伝えられない状態になっているのです。
このように2人の間に見解の相違が隠されていた場合、この相違点が元で、レッスンを重ねてもなかなか成果が出ない状態になっていくのです。
全ての母音を同じように響くよう、調整する
当教室で学んで頂く、いわゆる『古いタイプのベルカント』は先に述べたように、近代のベルカントが重視する”発声器官を直接的にコントロールしていく”アプローチとは全く異なった手法で体得されるものです。但し、目指す声が完成された時に機能する身体の仕組みは必ず存在し、その仕組みの構成は(正確な分類は困難ですが)大きく分けると次の3つに集約されます。(それぞれの役割については『メソードの考え方』の ”日本人の留学生が必ず指摘される問題点” をご参照下さい)
1.横隔膜による息の支え
2.喉開け
3.頭部の共鳴
念を押して申し上げますが、これらの構成要素は決して、その感覚や位置を確認したりするものではなく、分類を明確に定義されたものでもないという事です。 ”結果的にそうなっていた” 程度の意識に留めておくことが大事であり、そうしない限り、感情に委ねて歌う事や、体の外で響く『外の声』の感覚は決して手に入りません。これらの要素の中で最も初めに位置付けしなくてはならないのが頭部の共鳴の感覚です。何故なら、この感覚をつかめば、顎や体に余分な力が入らない限り、その響きとバランスのとれた横隔膜による息の支えや喉開けの感覚が自然と身についてくるからです。
この順序をなおざりにしたことにより、私はスランプを7年近く脱出することが出来ず、大きな回り道を余儀なくされました。
この頭部の響きが声楽家の声の個性を決定づける一番の要素になります。そしてこの響きを歌で使えるようにするためには、全ての母音を均一に響くよう調整する必要があるのです。男女ともファルセットと胸声 ※(胸の響きを強調するような意味ではなく、ファルセットに対比する声としての意味で使われている)を結合させるパッサッジョやパッサージョ(passaggio)、チェンジと呼ばれる音域が存在するとされていますが、(注:『声種、パート分けで注意すべき事』の ”「声種、パートは違っても発声方法は同一」という原則とパッサッジョの関係” をご参照下さい) 特に男声の場合、上の五線付近の音で響きが後ろに行ってしまうか、横に広がってしまう、日本人に特有といえる大きな問題が存在し、頭の上部に母音を保ちながらファルセットの意識を混ぜていく感覚を重点的に意識しながら改善していきます。
表情筋の使い方と喉開けを理解する
頭部の共鳴をつかむために、もう一つ重要な要素として『表情筋の使い方と喉開けの理解』があります。この方法を正しく理解することにより、軟口蓋、喉頭、口蓋垂、舌といった、本来そのコントロールに手を焼きがちな部位と呼吸との自然なバランスが定まってきます。このバランスの指針となるのが、 ”その時どのように母音が響いているか?” なのです。日本の声楽のレッスンでは喉開けについてはあくびをイメージし、軟口蓋を上げるように指導されますが、表情筋の使い方と喉開けの感覚をどう結び付けるかについては、詳しく説明されることが少ないように思います。この表情筋の使い方は非常に微妙で繊細な感覚を必要とし、喉開けに意識が集中している場合は、まずほとんどと言ってもよいほど失われている感覚です。
このバランスが取れるようになれば、声の正しいポジションが定まり、安定した声、音程で歌う事が出来るようになります。この時、横隔膜による腹式呼吸は既に理想的なバランスを保ちながら自動的に働き出しているので、表現だけに集中して歌う事が出来るのです。
外の感覚だけで自由に歌う
一通りのテクニックを身に付けるまでの間に一時的に内向きの歌い方(自分が行っていることを確認してしまう歌い方)になるのは避けては通れない道だと前に申しました。レッスンを始めて間もない段階で、外の感覚で喉に全く力が及んでいない状態で歌えると、『これが求めていた発声だ!』とご納得されるはずです。人によってはこの段階で安心してしまい、レッスンに来なくなる人もいます。しかし、この感覚を一週間忘れないで、同じように歌える人はほとんどいません。なぜなら、『この感覚を忘れないように』、『ここをこうして~ああして』と家に帰って一人で復習することは全て発声器官を直接観察する内向きの歌い方に繋がってしまうからです。レッスンと同じように外の感覚で歌うため、具体的にどこがどのように機能していたのか、どんなイメージがその働きに結びついたのかを正確に理解できていないからです。(注:詳しくは『メソードの考え方』の”古いベルカントの発声法に立ち返る必要性” をご参照下さい)このシビアなポイントの理解がメソード習得に要す期間を決定付けるのです。
内向きだった歌い方を外の感覚で歌えるように改善するのは、実はそれほど難しい事ではありません。但し、歌い手のその日の気分や、歌う直前に思いついた考え等によって、簡単に外から内へ、内から外へ感覚が移り易く、特にテノールにおいては、これらの迷いによって、一瞬で声を崩壊させてしまうような危険性を伴っており、そういったリスクや仕組みを充分に理解して、普段の練習から真剣に取り組む必要があります。こういった失敗を恐れるあまり、自身の発声器官の様子を、確認しながら歌う方向に進んでしまうと、内向きの歌い方に戻ってしまい、特定の部位への意識が全体の発声器官のバランスを崩してしまうきっかけになる場合があるので、注意が必要です。こういった内と外の感覚の違いを理解出来るようになり、外で歌い続けられる『確信』が持てれば、舞台に上がれる準備は既に整っているといえるでしょう。
入会金等の初期費用は頂いておりません。
受講期間 | 受講料 | |
プログラムに沿った初級者コース |
60分×12回 基本的に12週間以内に受講 |
50,000円 (レッスン12回分) |
プログラムに沿った中上級者コース |
60分×12回 基本的に12週間以内に受講 |
60,000円 (レッスン12回分) |
1回ごとの予約制個人レッスン (初心者、プロを問わず 1回のみの受講も可) |
1回 60分 (初回のみ120分) |
6,000円 (初回のみ10,000円) |
短期集中コースレッスン(開催日は不定期) (開催日は随時トップページの新着情報にてお知らせをしております。初心者・プロを問わず、夏休みなどの長期休暇を利用して学んで頂けるコースです。通常3か月かけて行う12回のレッスンを最短6日間で学んで頂くことが可能です) |
60分 ×12回 6日間~18日間以内に受講 (1日2回レッスン×6日間~1日1回レッスン×12日間+6日の休み) |
60,000円 (レッスン12回分) |
全てのコースは12回のレッスンで終了となります。その後はコースを継続されるか、日程調整の上 |