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声種、声のパート分けをするときに注意する事とレパートリーの選び方

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声種、パート分けで注意すべきこと

声楽の道を歩まれる方のほとんどは、合唱経験者であると思います。合唱を始められた時点で、既にボイストレーナーや指揮者に声種を決められていることが殆どで、本人も余程のことが無い限り、その声種で勉強を始めたいと考えるのが一般的です。
ちなみに私の場合、大学に入って初めて合唱というものに触れ、ボイストレーナーの先生に最初はダブルベースという、男性のパートの中では一番低いパートに振り分けられ、その後バリトンを経て、高音が出るようになってからテノールとして卒業まで歌い続けました。

アマチュアの合唱団においては、団員は専門的な訓練をしているわけではないので、基本的には最初に決められたパートでずっと歌い続けていくものです。高い音が出る人はソプラノやテノール、低い声が出る人はアルトやベースに分けられますが、私のように声域が広がったことによって、パートを移動することも決して珍しい例ではありません。これから発声を真剣に学ぼうとされている方は、まず、自分の本当の声種を知るところから始めなくてはなりません。自覚を持って本当の自分の声を作ろうと思うのであれば、練習を続けているうちに高い声が出るようになったからといって、バリトンからテノールに転向したり、声質が重めのソプラノがコロラトゥーラソプラノに挑戦するような考えを安易に持ってはいけません。ここではこういった声種、パートを決定する際に考えなくてはならない問題についてご説明いたします




”声種、パートは違っても発声は同一”
という原則とパッサッジョの関係

非常に誤解を生みやすいので、深く理解して頂きたい点です。発声は声種、パートに関係なく全て同一であるという考え方は、イタリアに留学して初めて私は認識しました。この考え方はパッサッジョやチェンジ(声区の変わる音域。以下パッサッジョで統一)は存在しないという考え方から生まれていますが、イタリア人の体感的な解釈を我々日本人がそのまま受け入れることは恐らく不可能でしょう。なぜなら、イタリア語のピッチは特別な知識がなくてもパッサッジョの存在をそれほど感じないで髙い音に上がっていける日本語にはない優位性を持っているからです。

私がはっきりと言えることは、日本語を話すポジションで歌い続ける限りパッサッジョは永久に存在し続けるということです。声種、パートによってパッサッジョの位置が異なるという発想が、発声も声種、パートによって異なるという発想に結びついているのです。仮にパッサッジョが存在するとすれば、その位置は歌い手が持つ発声器官の性質によって自ずと変わってくることは確かです。しかし、それらの最も自然なバランスは、知性が育まれ、話すために声が作り直される過程において失われていった、理想的な発声の仕組みには元々組み込まれていたものであり、発声器官が乳児のような理想的なバランスを得て、正しい声のポジションやピッチをつかめれば、自ずと理解出来る事なのです。

『メソードの考え方』の中でも申し上げましたが、パッサッジョの存在については、声を聴いた観客の中で、その存在の有る無しについて意見が分かれたとしても、少なくとも歌っている本人が本番の舞台でその存在を意識して歌ってはならないのです。我々日本人が『発声は声種、パートによって違う』と考えるのは『パッサッジョが存在する』という認識を持っているからです。パッサッジョを存在させないためには『正しいイタリア語のピッチ、ポジションで歌う』という前提が整っていることが絶対条件になるのだということをまず理解して下さい。






先天的に持っている音域だけで
パートを決めてしまう危険性

オペラの2重唱の最後にバリトンがテノールと同じ高音を出して、会場を盛り上げている場面を目にしたことはないでしょうか?
テノールの側からすれば、「その高音に至るまで、きついフレーズを歌ってきたのだから、最後の高音ぐらい一人だけで決めさせてくれ!」と思うのが本音でしょう。また、ソプラノとテノールの2重唱で、テノールが楽譜には書かれていないソプラノの高音を出して、喝采を独り占めしてしまうような例も良く目にします。一見同じような例に感じますが、この二つの例は根本的な事においては全く違います。

Aさんというバリトン歌手とBさんというテノール歌手が、仮に、全く同じ能力と声域(最低音から最高音)を持つ双子であったとします。声域が同じであっても、その声域の中間より高い音域を常時出すことに耐えうるか否かという点で、バリトンのAさんは決してテノールのBさんにはかないません。
5速の自転車に例えてみると解り易いかもしれません。両者とも5段変速の同じ自転車と同じ脚力を持っていることに変わりはありませんが、バリトン歌手は1速2速3速を常用しており、テノールと同じ最後の高音を出すため、つまり最高速を出すために3速で足の回転数を限界近くまで上げようとします。一方、テノール歌手は3速4足5速を常用するので、最後の高音は5速の余裕のある回転数で出すことが出来ます。この考え方はバリトンとテノールが低音を出すときの違いにも当てはまります。同じ低音を出す時、つまり超低速で走る時、バリトンが1速の丁度良い回転数で走れるのに対し、テノールは3速のギアで、ふらふらになる寸前の状態で走り続けることになるのです。

例に挙げたソプラノとテノールの場合はどうでしょう? この場合、高音域を歌う両者は共に3速4速5速を常用しています。よって最後の高音は両者とも5速という高速専用のギアを使うことになり、余裕を持った声の競い合いになるのです。

話を少し戻します。1速2速3速を常用しているバリトンは年数と共に4速5速のギアの存在を忘れ、より低音に適した重心の、男性的で朗々と響く声が身に付きます。3速4速5速を常用するテノールは1速2速のギアの存在を忘れ、輝かしい高音域に重心が定まってくるのです。つまり、元々は同じ能力と声域(同じ変速機と脚力)を持っていても、常用している声域が低いか高いかによって声質は時と共に変わっていくのです。こういった、決定された声種、パートによって後天的に声質が変わっていく要素を、まず考慮する必要があります

もうひとつ考慮すべき点として、違う例を挙げてみましょう。声域だけが同じで、赤の他人である2人の同じ声種の歌手、(5段変速の自転車である点は同じですが、脚力が違います)が同じオペラアリアを歌った場合、歌うのに必要なギアを変えるタイミングやその時、ペダルに加える脚力は元々持っているパワーが違う為、自ずと変わってきます。もしギアを変えるタイミングを2人とも無理に同じにしてしまうと、脚力の違いから、どちらかがバランスを失い、先に転んでしまいます。
いくら声域が同じであっても、先に申しました先天的な声の重心が異なるので、同じ音であっても、その音を出す困難さは違ってくるのです。

最高音や最低音だけの判断によってパートを決定すると、声の重心を見過ごしたことによってある段階から伸び悩む可能性が有り、長期的に見ると非常に危険なことだといえます。念のために申しておきますが、これらの変速機の話はあくまで、人間が生まれながらにして持っている機能によって自動的に働くことが前提であり、上に述べた『声種、パートは違っても発声方法は同一』という原則を決して無視してはいけません。





調整を変えて歌う事とレパートリーの関係

上で述べた危険性を充分に考慮して声種、パートが決められると、常時歌う音域が決まり、正しいテクニックを伴って練習していけば、時と共に声質は良い状態に変化してきます。いつも自分に適した音域の曲を無理なく歌い続けていけば、声の調子を大きく崩したりすることは決してないのです。

声の問題は、ほとんどの場合、新しい曲を勉強するようになったきっかけで起こります。自分の中では今までと全く同じことをしているつもりでも、楽譜に書かれている音の全体的な音域が通常歌っている音域に比べて極端に高かったり、低かったりすることによって、一つ一つの音を検証して勉強しても克服できない、先に解説したような、先天的な発声器官の能力を超えたことによる問題が起こってくるのです。歌曲やオペラアリア一曲を歌うのであれば移調をすれば問題なく歌えるようになりますが、オペラ全幕を歌うという事になればそういった対処は出来ないので、事前に自分の声質と似た歌手がレパートリーにしているか、歴史的なことを充分に検証してから取り組まないと、本番が近付くにつれて調子を落としてしまうような最悪の事態を招くことに繋がりかねません。私の経験上、レパートリーが自分の声に合っているかどうかは、そのオペラ全曲を歌えるようになってからでないと判断できません。なぜなら、アリアだけや有名な重唱だけをさらってみて歌えたとしても、全曲を楽譜に書かれている順番通りに歌ってみて、初めて現れる、予想もしなかった症状が突如として起こることがあるからです。

生真面目な性格の人ほど声の問題が起きると、自分の発声方法に目を向けてしまいがちですが、こういった側面から検証してみることで声の問題が思わぬ解決に至ることがあるのです。有名な歌手がCDにアリアを録音していたり、コンサートで歌っていたからといって、そのオペラをレパートリーにしている訳ではありません。オペラ全曲を歌う依頼が来たときは、まずこういったことを理解してから返事をするよう心掛けて下さい。



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